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トラックジャーナリスト中尾真二の「トラック解体新車」
新型UDクオン 富士スピードウェイで試乗会
2017年6月3日 試乗
ゴールデンウィーク直前、富士スピードウェイにてトラックオーナーや報道陣に向けた新型クオンの試乗イベントが開催された。大型トラックの試乗会をサーキットで開催することは珍しい。しかも、FIA国際公認サーキットの本コースを試走できるとあって、参加者は新型クオンの新機能を大いに楽しんでいた。
試乗会に招待されたのは、クオン他UDトラックスの車両オーナー、運送関連などトラック業界関係者など100名ほど。4月25日から27日の3日間のプログラムで開催された。用意された試乗車は、クオン CDドライウィング(日本トレクス)、CDドライウィング(日本フルハーフ)、CD冷凍バン(日本トレクス)、CG冷蔵ウィング(日本トレクス)、CGドライウィング(日本トレクス)の5台。エンジンはどれも390馬力のGH11TB。
参加者は、スタッフを助手席に乗せてコース上でクオンの新型エンジンやESCOT-VI、ディスクブレーキ、4段階排気ブレーキ、車間制御オートクルーズといった機能を試しながら富士スピードウェイの本コースを1周ずつ回る。サーキットだからといって全開走行ができるわけではないが、全長4.5km以上の富士のコースでさまざまな新機能を試すことができる贅沢な試乗イベントだ。
まず、スタート地点はピットロードではなくコース上のスタートグリッド中央付近。ここで参加者は運転席に乗り込む。招待者は経営者・管理職が多くスーツ着用の人も多かったが、クオンのロンググリップは2段ステップでも乗り降りはそれほど難しくない。
スタートするとエコモードによる発進加速やESCOT-VIによる自動変速を第1コーナー手前までで確認する。慣れない車でアクセル操作がラフになってもソフトクルーズコントロールやアクセラレーションリミッターが、スムースな発進をサポートしてくれる。シフトアップも回転数や車速に応じてステップシフトアップをしてくれる。
第1コーナーではディスクブレーキのフィーリングを試すことができる。ディスクブレーキは、踏力に応じたリニアな効きで減速Gを右足の操作加減で制御できる。ドラムブレーキのようにだんだんと減速Gが高まり最後に「カックン」と前のめりなるブレーキを防ぎやすい。新型クオンでは、フットブレーキ操作に合わせて自動的に排気ブレーキのアシストを行う。第1コーナー出口ではこの機能(ブレーキブレンディング)も体験できる。排気ブレーキレバーを操作しなくても、作動音がするのでわかる。
コーナーを抜けると下りストレートから左コーナー(コカ・コーラコーナー)となるが、ここでESCOTロール(燃費向上のためにギアをニュートラルにする惰性走行)を体験する。ギアがNになっても車速が落ちたり、上がったりすることもなくよく制御されている。左コーナー手前で軽くブレーキを踏み、補助ブレーキレバーを操作すれば、適度な減速でコーナーをクリアできる。新型クオンの補助ブレーキは4段階まであるが、2段目のブレーキでちょうどよい減速が得られた。フットブレーキはほとんど不要なので、ブレーキの持ちもよさそうだ。
続いて100Rの右コーナーだが、ここで補助ブレーキをさらに2段階効かせる。3段目でもコーナーはクリアできそうだったが、荷物を積んだ状態ならばコーナリング中の横Gは抑えたいので4段目までレバーを倒した。100Rの出口は上り坂になっておりヘアピンコーナー続く。出口ではアクセルを踏み込むが、あまり意識しないでも上っていってくれた。エンジンはまだエコモードのままだが、燃費制御によるトルク感の不足は感じなかった。
ヘアピンを立ち上がり300Rの頂点付近から再び下りとなる。ここのダンロップブリッジ手前で一旦停止し、ESCOT-VIによる微速後退のテストを行う。バックでは上り坂となるわけだが、ATのクリープ現象とは違った半クラッチに近い微速後退がアクセル操作だけで可能だ。この制御は、実際の半クラッチのようにクラッチ板を滑らせるのではなく、短時間だけクラッチをつないではすぐに離したときの惰性を利用しているそうだ。プラットフォームでのバックでの荷台寄せも、リアモニターと併用でかなり精度を高くできそうだった。
ダンロップコーナーからは急こう配と連続カーブが最終コーナーまで続く。ここでエコモードを解除し、必要ならマニュアルによるギア操作を体験する。上りながらのカーブとなり大型トラックにはかなりきついコースだが、アクセルさえしっかり操作していればパワー不足やトルク不足を感じることはない(試乗車はすべて総重量が20トンになるように調整されている)。むしろマニュアル操作でギアを間違えたり適切でないと失速することがある。
記者の場合、新型クオンのシフトレバーについたマニュアル操作ボタン(親指で操作する)よりは、レバーを前後に倒すシーケンシャルシフト方式が操作しやすいと感じるので、ヘタにマニュアル操作するより、変速はESCOT-VIに任せたほうがよいと思った。難しい上りの連続カーブで適切なギア設定は機械に任せて、ドライバーはハンドル操作とアクセル、ブレーキ操作に専念すればよい。結果的にこのほうが安全でありおそらく省エネだ。
最後はホームストレートで、オートクルーズによる走行を行い試走は終了となる。
試乗会では、待ち時間のプログラムも充実していた。参加者はグループ分けされ、試乗の順番を待つ間、パドックなどに展示された新型クオンの車両、エンジン、ミッションのカットモデル他を見たり、新機能のプレゼンテーションを受けたりする時間も設けられた。周辺にはスタッフやエンジニアもいるので、細かい質問などにも対応してくれる。
さらにパドック裏の駐車場では、UDカゼットによるトライアルゲームも実施された。駐車場に設定されたパイロンコースを指定した時間(1分)で戻ってくるという簡単なゲームだ。優劣は走行タイムではなく指定時間との誤差で決まるものだ。
イベントの最後には、女性トラックドライバーとして活躍する渡辺かなえさんのトークセッションも開催された。渡辺かなえさんは、実家が重機レンタルの会社で自然に大型トラックの免許をとり、けん引免許も持っている。渡辺さんは、新型クオンのESCOT-VIの操作性や運転のしやすさにびっくりしたと感想を語り、「12Vのシガーソケットが追加されたのも、いろいろなアクセサリーが使えるので便利です」と内装のこだわりポイントを評価していた。
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プロフィール
中尾 真二
IT系技術書の企画・編集を経て2003年にフリーランスとして独立。
自動車関係では、パワートレーン、サスペンション、タイヤ、用品・部品関連技術の記事を中心に、主にウェブ媒体向けの取材・執筆活動を行っている。
専門は、ADAS、自動運転、AI、クラウドサービス、セキュリティなど、IT関連のバックグラウンドを生かした記事。 -
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