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  • トラックジャーナリスト中尾真二の「トラック解体新車」

    地味に浸透するBYDのEV 国内メーカーの動きは?

     

    2022年9月10日 Column

     
    • New-eCanter-prototype

    2021年12月、京阪バスは京都駅や七条駅周辺の巡回バスのうち4台を電気バス(EVバス)に切り替えた。同社は600台ほどの保有バスも順次EVに切り替えていくという。類似の事例を最近多く耳にするようになったと思う。

     

    ●物流・交通事業者で進むグリーン化

    背景にはカーボンニュートラルという世界的な潮流があるとされる。自治体は国の政策に基づき公共事業等のCO2削減が急務とされ、グローバル企業(=大手荷主)は、環境負荷や社会貢献度を示すESGスコアを上げるため工場や物流のグリーン投資が活発だ。交通事業者においては、たとえば国交省の「地域交通グリーン化事業」などの政策補助金を利用したいという声や高騰する燃料費など運行コストを削減したいという現実的なニーズも少なからず存在する。

     

    だが、交通・物流事業において大型車の電動化は課題も多い。乗用車のような市場とも異なるため同列に語ることはできない。その一方で、貨物輸送よりルートがほぼ固定で運行管理も限定エリアとしやすい路線バスでは、ここ数年でEVなど電動車の導入が目立ってきている。以下は、冒頭の京阪バス以外の導入事例をいくつかピックアップしたものだ。

    小松バス(石川県):日野ポンチョEV
    フジエクスプレス(東京都):日野ポンチョEV
    日の丸自動車工業(東京都):デザインランド社製タービンEV(PHEV)
    川崎鶴見臨港バス(神奈川県):いすゞエルガミオ改
    プリンセスライン(京都府):BYD K9(大型バス)
    北九州市交通局(福岡県):ファイバーHFG改(韓国製)
    美濃加茂市交通局(岐阜県):BYD J6(小型バス)

     

    国交省のグリーン化事業政策は、EVだけでなくハイブリッドや燃料電池車(FCV)も対象としている。また、既存車両をEV化したものも対象となるため、上記の事例の車種、メーカー、パワートレインの方式はさまざまだ。

     

    ●電気バス界の巨人:BYD

    グリーン化やゼロエミッションは、国内メーカーも取り組んでいるが、注目すべきは中国のBYDだ。

    BYDの電気バスの導入は、2020年から着実に増えている。目立つのはJ6という小型モデルだ。2020年にはハウステンボスが5台ほど導入した(同社はこのとき大型のK9も5台導入している)。その後、全国の自治体や交通事業者の採用が進み、すでの60台以上の電気バスを日本で販売している。EVバスのシェアでいったらおよそ70%とも言われている。

    ヘッドライトが3つずつ、縦にならんだ小型バスを見たことがないだろうか。縦3つの6灯コンビネーションライトはBYDのJ6のアイコンとなっている。前述の導入事例では、日野自動車のポンチョががんばっているようだが、ポンチョはBYDのOEMだ。

     

    BYDのバスが国内で売れている理由は、値段と選択肢の問題だ。BYDはもともとバッテリーの製造メーカーで、中国国内の完成車メーカーにバッテリーを供給していた。その技術を発展させ中国国内では自社ブランドの完成車メーカーでもある。2021年、世界のEV販売数ではテスラに次ぐ2位のポジションを持つ。

     

    ●世界市場で勝負するBYDの強み・競争力

     

    BYDのEVバスは価格競争力が高い。同社のバッテリー製造技術と市場規模によって、BYD J6(小型バス)の値段は2000万円しない。大型のK8でも4000万円を切る。

     

    これらの価格は、同サイズの国内ディーゼルエンジンバスよりは高くなるが、燃料代やメンテナンスなど運用コストを考えると検討対象になる範囲だ。車両初期投資はかかるものの、政府や自治体の各種補助金が使える。燃料代を安い電気代に切り替えることができる。アドブルーやエンジンオイルが不要。ガス検査やマフラー類のメンテナンス不要。などメリットも多い。

     

    このようなメリットがあるにもかかわらず、国産大手のEVバスの価格は補助金がでても検討できる範囲にない。グリーン化政策によってゼロエミッション車が必要な自治体や事業者にとって、実証実験や政策主導のプロジェクトでもなければ、ほぼワンオフで生産されるEVバス、コンバートEVバスでは、グローバルで量産されているBYDの価格と勝負にならない。

     

    ●国内商用車メーカーはまず電動トラックから

     

    日野自動車やいすゞ自動車など、国内商用車大手も手をこまねいているわけではない。だが、いまのところどのメーカーもトラックのEV化に注力している段階で、バスにまで手がまわっていない。日野自動車とトヨタによる燃料電池バス(FCV)が実用化されているが、価格とインフラ整備の兼ね合いで非常に限定的なものだ。

    EVトラックでは10年の実績がある三菱ふそうは、2トンから8トンクラスまで中型EVトラックのラインナップを発表して、国内では唯一EVトラック市場をリードしているが、バスについては「まずはEVトラックから」という。日野やいすゞは年度内に小型EVトラックの市販を開始すべく準備を進めている。どちらも、プロトタイプや実証実験レベルでは、EVトラックを持っているが、市販はこれからだ。

    都市部や住宅地において排気ガスもださず騒音も少ないEVバスが広がることは悪いことではないが、そのための政策補助金の多くが外資企業に使われていると思うと、もどかしさを感じるのも事実だ。

     

    ●国内勢ではベンチャーや中堅企業が頑張っている

    だが、国内にもEVを独自開発し販売する企業が存在する。マイクロEVやラストマイル輸送向けのデリバリーEVバンなどを手掛けるタジマモーターコーポレーション、FOMM、ASR、Forofly、HW ELECTROといった中堅企業やベンチャー企業だ。このうちEVモーターズジャパン(福岡県北九州市)はコミュニティバス、マイクロバス、GVW 6トンクラスの物流バンなどを手掛けている。EVモーターズジャパンは、リチウムイオン電池の充放電システムやEVのインバーターなどを開発を専門に行っていた会社だ。BYDと同様にEV市場に早くから注目し、EVトラックやEVバスなどの自社開発を進めてきた。

     

    2021年にマイクロバスのプロトタイプを発表しており、2023年発売予定のGVW 6トンクラスの物流車(F8 Series8-S2)は目標価格が2000万円といい、BYDのJ6に十分対抗できる価格と性能を持っている。この車両は、2022年5月に開催された「ジャパントラックショー」でプロトタイプがお披露目されていた。荷室はドンガラ状態のベース車だが、保冷車からマイクロバスまで架装しだいでいかようにもできるという。

     

    現状、車両の製造は中国企業に委託しているが、国内工場の建設も進めている。もともと設計その他は、国内のEVモーターズジャパンが行っている。中国工場の生産管理や品質管理も国内基準で行っており、国内でのナンバー登録や型式指定もEVモーターズジャパンが行っている。れっきとした国内自動車メーカーである。

     

     

    ●変革しながらソフトランディングを目指す

     

    一般的に、国内大手自動車メーカーは電動化シフトに遅れていると言われている。アウトプットである製品・車両についてみればそうかもしれないが、技術や企業意欲まで遅れているわけではない。小回りがききにくい大手メーカーは、急激な変革を避けたいと思うため、政府や政策も大手企業や既存企業の温存や延命に注力しがちだ。

    産業全体への影響が大きいためだが、そのために国内ベンチャーや中堅・中小企業の活動を制限すると、産業の柔軟性や成長を妨げる。構造を強化するあまり、全体としては変化や外圧に対して脆弱(脆い)産業になってしまう。

    グリーン化や電動化など時代の変化や要求は受け入れなければならない。同時に既存システムのソフトランディングを目指す必要もある。業界としては難しい舵取りだが、スマートフォンやPCのように、気がついたら街中で走っているバスが海外製に置き換わっていたということは避けたい。

     

    電動バス導入ガイドラインについて(国交省)
    https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk10_000036.html

     
     
     
     
     

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