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  • トラックジャーナリスト中尾真二の「トラック解体新車」

    自動運転やコネクテッドカーはトラックドライバーの仕事を奪うのか?

     

    2022年7月29日 Column

     
    • 012

    旅客運輸業界は、見方によっては乗用車業界よりも変革の危機にさらされている。世界的な脱炭素・カーボンニュートラル政策は、とりわけ電動化・ゼロエミッション化が難しい大型トラックやバス、長距離旅客輸送に重くのしかかってきている。大型EVトラック、電気バス・FCVバスなど各社の取り組みは続くが、メーカー、交通事業者、運送事業者に電動車開発、次世代環境適応車へのリプレースなど、あらたな投資を強いている。

     

    これとは別に、長年の業界の問題としてドライバー不足や労働環境問題もある。コロナ禍で増える輸送に対し、トラックや物流倉庫が圧倒的に足りない状況がある。先が見通せない中、各社も安易な投資や拡大戦略もとりにくい。自動運転やコネクテッドカーの開発・普及が進むと今度は人間のドライバーがいらなくなる、といった声まで聴くようになった。

     

    ダメ押しのように、倉庫周辺の待機・時間調整問題や2024年から導入される労働時間制限問題も差し迫ってきた。まさに課題山積みの状態だ。

     

    ●乗用車から商用車にシフトする理由

    このような記事や議論に触れると、暗澹たる気持ちになるが、視点を変えると別の世界が見えてくる。ここでは、自動運転トラックによって人間のドライバーが不要になってしまうのかという点と、貨物輸送業界の変革について考えてみたい。

     

    確かに脱炭素やシェアリングカーなどは既存の自動車産業のビジネスモデルの逆風としてとらえられている。しかし、MaaS革命やサブスクリプションといった潮流による、車両の保有から利用へのシフトが、商用車にはあまり大きな影響はないという見方がある。所有から利用へというが、これは主に個人所有であるオーナーカーの話だ。トラックやバスはもともと事業者や法人がリースを含む契約で所有または利用する形態が普通だ。

     

    サブスクリプションやシェアリングのような形態が増えれば、事業者としては車両を保有する選択肢がひろがり、むしろ保有しやすくなる可能性がある。乗用車よりも稼働率が高く、メンテナンスコストもかかるトラックは、保険や整備費をまるごとアウトソースできるサブスクリプション、シェアリングエコノミーをうまく利用すれば、ビジネス拡大につなげることができる。

     

    2019年以降、矢野経済研究所、PwCなど複数のシンクタンクが、MaaS革命やシェアリングエコノミーによって乗用車と商用車の割合が拮抗すると予測している。

     

    コロナ禍によるグローバルでの生活様式の変化は、在宅勤務や巣ごもり需要によって増えた、ECや通販が物流ニーズを高めた。この業務スタイルやライフスタイルは、終息後もなくならないだろうともいわれている。ラストマイルを含む貨物輸送の活況もしばらくは続くとみられている。

    ●自動運転の現実はそう単純ではない

    貨物輸送ではドライバー不足も深刻な問題となっている。業界では自動運転トラックの研究、トラックの隊列輸送の実証実験、ラストマイル輸送でもドローンや自律走行ロボット(AGVなど)を活用する動きもある。

     

    このような動きは、一方で、職業としてのドライバーの地位を脅かす懸念もささやかれている。たしかに世界的に拡大する貨物輸送ニーズに対して、人手が追い付かない部分にロボットや自動運転が入り込む余地がある。技術革新の方向性と市場経済の原理として、この流れは止められない。新しい技術が有効なものであれば、そこに必ずビジネスが生まれ拡大していく。コストダウンや効率化、生産性の向上は、一般的に企業の利益に貢献するものだ。資本経済において、AIだろうがロボットだろうが革新や技術を排除する合理的な理由はない。

     

    まるでディストピア小説の世界感だが、現実はそう単純ではない。まず、トラックやバスが完全無人化されるにはまだ相当の年月が必要だ。走行エリアを限定したレベル4自動運転は、かなりの段階まで実用化が進んでいるが、法整備や社会的な認知・許容が進んでいない現実がある。そのため、無人走行が可能なトラックやバスも、しばらくはドライバーの同乗が必須となるだろう。万が一の場合、人間が操作を引き継ぐ必要がある。安全に自動停止する技術も開発されているが、停止したあとの復旧や移動は人間や他の車両の力を借りることになる。

    ●ドライバー側に問われる新たなスキル

    ただし、自動運転トラックが普及してくると、ドライバーに求められる能力も変わってくる。例えば、無人化されたトラックやバスでも緊急時対応のため、遠隔操作による走行技術も注目されている。ひとりのドライバー(オペレーター)が、自動運転車両を遠隔で監視、運行操作させる技術だ。完全な無人走行ではなく、一人のオペレーターが同時に複数の車両の自動走行を監視・制御できれば、トラック・バスのドライバー不足の解説策のひとつになる。

     

    逆の見方をすれば、ドライバーは、自分が運転する車だけでなく隊列走行する自動運転車両の監視や制御するスキルを身につければドライバー兼オペレーターとしての地位が確立される。路線バスの無人化が進んだとしても、オペレーションセンターには運行監視や遠隔操作をするための人間が必要だ。

    重機の世界ではi-Constructionによる遠隔操作が実用化されているように、貨物輸送でもこのスキルを身につければ新しいポジションが得られるかもしれない。ひょっとすると、大型免許には、遠隔運転や遠隔監視の項目が追加されるかもしれない。

     

    MaaS革命やシェアリングビジネス、自動運転などの新技術は、確かに業界側、ドライバー側に変化や対応を要求するかもしれないが、それに対応できれば新しいビジネスや職業につながっていく。VRやシミュレーターを使った遠隔操作や自動運転オペレーターなど、若い世代へのアピールや活躍の場の提供となれば、ドライバーの後継者問題にもプラスに働く。

     

    変化を否定的にとらえていると、その波にのまれてしまう。むしろそれを受け入れ、利用してやるくらいの認識を持つべきだ。

     
     
     
     
     
  • プロフィール

    中尾 真二

    IT系技術書の企画・編集を経て2003年にフリーランスとして独立。

    自動車関係では、パワートレーン、サスペンション、タイヤ、用品・部品関連技術の記事を中心に、主にウェブ媒体向けの取材・執筆活動を行っている。

    専門は、ADAS、自動運転、AI、クラウドサービス、セキュリティなど、IT関連のバックグラウンドを生かした記事。

     
     
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