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  • トラックジャーナリスト中尾真二の「トラック解体新車」

    三菱ふそう 新型スーパーグレートのADAS機能を試す

     

    2017年4月1日 試乗

     
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    2月に発表された三菱ふそうの新型スーパーグレート。モデルチェンジの常として、動力性能や環境性能の向上、内外装の改良やデザイン変更など、見るべきポイントはいくつかあるが、今回の最大の特徴は、緊急ブレーキや前車追従走行といったADAS機能の充実と、全車種にAMT(自動変速トランスミッション)が設定されたことだろう。

    その発表の翌月、3月25日には、三菱ふそうの喜連川研究所のテストコースにて新型のADAS機能のデモと試乗によるプレス発表会が開催された。当日のデモ内容と、AMTの変速フィーリング、クリープ現象を再現した微速前進・後退の制御などをレポートしたい。

    試乗のために用意された車は、同研究所で実際の製品開発やテストに利用されたプロトタイプだそうだ。外装は最終バージョンではなく偽装されており、内装も同様に暫定的な仕様で、一部は測定器などがつながれていた。

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    ●時速45キロでの自動ブレーキ実験

    新型スーパーグレートの自動ブレーキシステム(ABA4)は、停止車両や歩行者にも対応するように進化した。このテストは、時速45キロで、停止車両に見立てたダミーにノーブレーキで突っ込み、自動ブレーキだけで停止できるかの実験が行われた。

    大型トラックとはいえ、このレベルの実験で失敗することはもはやないのだろう。数百メートル後方からスタートしたスーパーグレートは、設定速度に達したらスピードを維持したままダミーに迫ってくる。直前までスピードは落とさないが、30メートル手前ほどで緊急の自動ブレーキがかかると、エンジンの負圧によるアシストも入り、20メートル弱の停止距離、ダミーの数メートル手前で完全停止した。ABSも働いているため、タイヤのスキール音はほとんどせず、補助ブレーキの作動音がはっきり聞こえる状態だった。

    なお、衝突判定は、フロントバンパーに取り付けられたミリ波レーダーが行う。

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    ●クルーズコントロールは高級乗用車並み

    次は助手席に同乗して、車間距離保持機能付きオートクルーズ(プロキシミティークルーズコントロール)と左側障害物の警報装置(アクティブサイドガードアシスト)を体験した。

    オートクルーズの設定は、乗用車と同じようにステアリングコラムのスイッチで行う。ONにすれば高速道路などで設定した速度をアクセル操作なしで維持してくれる。新型スーパーグレートでは、この機能に加え、前車に追従して減速・停止・再発進まで自動化されている。渋滞などでは前の車に合わせて減速していき、完全停止しても2秒以内に前の車が再び動き出せば、発進も自動だ。2秒以上止まった場合でも、アクセルを軽く踏んでやれば前車の追従とオートクルーズが再開される。

    乗用車などではアダプティブオートクルーズなどと呼ばれている機能とほぼ同じものと考えればよい。渋滞でノロノロ運転や停止・発進を繰り返すような場合、運転が非常にらくになる機能だ。大型トラックでもこの機能は有効だ。

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    次に、前の車の右にでて並行して走行する。このとき助手席側のAピラーに取り付けられた三角の警報ランプが黄色く点灯する。車体の左側に取り付けられたミリ波レーダーが、車両や自転車などを検知すると、まず光で警告するわけだ。ミリ波レーダーは2つ取り付けられ、レーダーの周辺だけでなく、左前後方向にトラックのほぼ全長をカバーしている。

    この状態でウィンカーを左に出すと、今度はランプが赤に変わり警告音とともにドライバーに危険を伝えてくれる。ミラーをよく見ていれば発見できるが、左側に自転車や車両が入っただけでランプが点灯するので見落とすことはまずないだろう。確認を怠ってウィンカーをだせば警報音が鳴る。自転車などの左折巻き込み事故防止に役立つ他、バイクのすり抜け検知、左側への車線変更の安全確認などにも活用したい機能だ。

    ●クリープ現象の再現で低速バックも自在

    スーパーグレートは、新型から全車種に電子制御の自動変速トランスミッション(AMT)が搭載され、すべて2ペダル運転となる。シフトレバーにはマニュアルモードもあるが、基本はDレンジのままで、発進から減速・停止までAMTが最適なシフトチェンジを行ってくれる。

    しかし、大型車の電子制御AMTの場合、微速・低速での走行やATのクリープ現象を使った微妙な操作がやりにくいという問題がある。そもそも、電子制御AMTの場合、トルコン(流体カップリング)ではなく乾式クラッチのため、いわゆるクリープ現象がない。そのため、スーパーグレートでは、AMTでクリープ現象を再現できるようになっている。

    試乗では、坂道発進と低速のバックでこの機能を試すことができた。スーパーグレートは、従来から坂道発進をアシストするEZGO機能を持っているが、これとクリープ機能をうまく使えば、坂道での停止が楽になる。微速でのバックもアクセル操作で微妙なコントロールが可能だった。プラットフォームへの着車などに役立つ機能だ。

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    ●トルクフルなエンジンは健在、AMTでより使いやすく

    最後はオーバルのテストコースでのフリー走行だ。ここでは、AMTによる最適なシフト制御や運動性能、運転のしやすさなどを体験した。車両は、10.7Lエンジン 6R20を搭載したモデルと、7.7Lツインターボエンジン 6S10の2モデルに試乗した。それぞれ総重量が20トンになるようにウェイトを積んでいた。

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    まず運転席に乗り込むのだが、昇降ステップが3段になっているので女性などは乗りやすいのではないだろうか。運転席もほどよいクッションとエアサスが心地よい。ステアリングコラムとレバーに集中した走行関連のスイッチは、ダイムラーの乗用車ブランドであるメルセデスの設計コンセプトを引き継いでいるからだろう。

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    発進させてまず驚くのは車内の静かさだ。車両が実際の開発やテストに利用されているプロトタイプのため、走行距離がかさんでいるので、ギャップなどではそれなりの音がするが、エンジン音はかなり抑えられている。ロードノイズや風切り音が逆に目立つほどだ。開発側も乗用車並みの静粛性にこだわったという。

    電子制御のAMTの変速制御も悪くない。走行付加に応じて1速とびのシフトアップをしてくれる。20トンを感じさせない加速は、トルクに定評のある三菱エンジンのなせる業だろう。補助ブレーキは4段階の切り替えが可能で、細かい減速の制御ができる。ブレーキシューの持ちもよさそうだ。

    7.7リットルの6S10は、比較すると高速域でのトルク感に若干の違いがあるものの、ダウンサイジングのツインターボと、やはりトルクフルなエンジンで力不足は感じなかった。排気量の差があり同じ総重量(20トン)なのに、発進加速や走行性能に大きな違いがなかったからだ。

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    他にも、環境性能やLEDヘッドライト、GPSとマップデータを使ったカーブや勾配の予測エンジン制御、ワイドシングルタイヤのオプションなど、特筆すべき改良ポイントがあるが、渋滞対応のオートクルーズ、自動ブレーキ、巻き込み防止レーダー、カメラによる車線維持、コックピットカメラによるドライバーの健康管理といった、高級乗用車並みの高度安全運転支援(ADAS)技術が惜しみなく投入されたスーパーグレートは、これからの大型トラックのスタンダードになっていくだろう装備を先取りした感がある。

    (取材時は発表前のため車両の外装が偽装されています)

     
     
     
     
     

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