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ドライバー不足打開なるか?...準中型免許で運転できる中型トラック...三菱ふそうが投入する4V20搭載ファイター
2018年9月4日 新車発表会
●使えない準中型免許をどうするか
ドライバー不足解消のため、若い世代でもとりやすい区分として、2017年3月に導入された準中型免許(車両総重量7.5t未満・最大積載量4.5t未満)。しかし、この免許を取得しても、いわゆる中型トラック(車両総重量11t未満・最大積載量6.5t未満)では運転できる車種がほとんどなく、実質小型トラックしか運転できないという問題がある。
もちろん中型トラックでも、荷台の大きさや積載量、装備を工夫すれば準中型免許の規定をクリアできるトラックを作れないことはない。例えば日野レンジャーのFCシリーズは、一般的な架装で総重量8t前後。特注コストを無視すれば不可能ではないかもしれないが、現実的ではない。
架装メーカーも現状では小型トラックで準中型免許に対応することになる。トラックドライバーを増やそうと導入された準中型免許だが、市場とのミスマッチであまり使えない免許だったのだが、ここにきて状況が変わりそうなトラックが登場した。
●4D34をベースに開発された新型エンジン
8月27日、三菱ふそうトラック・バスが発表した新型ダウンサイジングエンジン「4V20」は、準中型免許でも運転できる中型トラックのために開発されたものだ。同日、4V20を搭載したモデルがファイターに正式に追加された。
総重量8tから12tクラスで、積極的に準中型免許対応を車両メーカーが謳うトラックとしては、おそらく業界初といっていいだろう。
4V20は、排気量3.9L、最高出力125kW、最大トルク520Nm、4気筒のOHVディーゼルだ。コモンレール式燃料噴射にターボチャージャーを搭載する。排気ガスの後処理装置(ATS)には同社のBlueTechシステム(DPF+SCR)を採用した。H28年排出ガス規制に適合し、H27年度重量車燃費基準+5%を達成している。
三菱ふそうがアジアで展開する4D34という4気筒エンジンがベースとなっている。これを日本の準中型免許対応車両に向けて、エンジン特性、環境性能、軽量化を図ったものだ。しかし、三菱ふそうではこのエンジンを国内市場向けととらえていない。4V20は、ダイムラーグループのエンジンとして、グローバルなパワートレインのひとつとして考えている。そのため、海外でも適合する車両クラスやニーズがあれば、積極的に展開するとしている。
●準中型免許で運転できるフルキャブ、エアサス車4V20を搭載したファイターは、すでに販社経由での商談は始まっているそうだが、正式な発売は8月27日からとなる。その特徴は、軽量化とそれに伴う積載量の最大化だ。小型トラックを準中型トラックに対応させる場合、車両総重量を上げられるので積載量の確保は難しくない。しかし中型トラックを準中型トラックに変更するには、全体を軽くしなければ積載量が減るだけだ。
ファイターには6M60という6気筒エンジンが搭載されているが、4V20はエンジン単体だけで220kgも軽い。他にもサス、エンジン補器類、ATS関連装置を軽量化、小型化することで、6M60より300kgの軽量化を実現している。4V20ファイターの積載量は4t前後となるはずだ。最大積載量はボディタイプや架装によって大きく変わる。三菱ふそうによれば、新明和工業の架装によるダンプタイプで3.9tまで確保できたという。
キャブやフレームなどは、現行ファイターそのままなので、フルキャブ、幅広キャブ中型トラック並みの大きさで、準中型免許で運転可能なトラックとなる。
主なターゲットは、高速道路を使わない近距離の地場配送だ。幹線道路での輸送がメインだが、小型トラックより積載量を確保したい、準中型免許でも運転できる車がほしい、といったニーズを満たす。ファイターにはエアサス仕様もあるので、精密機器の輸送にも対応できる。●気になる動力性能は
とはいうものの、中型トラックにダウンサイジングエンジンとなると、気になるのは動力性能だ。例えば、この領域でライバルとなる日野レンジャーの4気筒エンジンは、排気量は5.1L。馬力、トルクともに4V20を上回る。積載量が4t前後でパワー不足は感じないだろうか。
この点について三菱ふそうは「実用上は問題ない」とする。まず4V20は、ダウンサイジングを前提として開発されているので、エンジン特性、トルク特性ともにチューニングされている。トランスミッションは6気筒ファイターと同じMTだが、ファイナルギアレシオは4.875と5.488(ダンプタイプ向け)が用意される。そして「ローンチアシスト」という新機能とEZGO(坂道発進アシスト)によって排気量を感じさせないようになっているという。
ローンチアシストは、クラッチミート時にアイドリングを自動的に800rpmまで上昇させる機能だ。平坦地はもちろん、坂道ではEZGOを併用すれば発進でもたつくことはないそうだ。
●AMT搭載やEV化への期待動力性能については、スペックだけ比較すると6M60や他社の中型ダウンサイジングエンジンより非力な面は否定できないが、他社の中型ダウンサイジングエンジンは、あくまで中型トラックの規格内での小排気量化、省エネ化を目指したもの。排気量も5Lと、4V20より1000ccも多い。
4V20ファイターは、小型トラックと中型トラックの間を埋めるものなので、用途やニーズが異なる。従来の中型トラックと比較してもあまり意味はない。中長距離輸送、動力性能が必要なら6M60ファイターをこれまでどおり使えばよい。
ただ、欲を言えばAMT設定がほしかった。重量的に難しいのはわかるが、若手ドライバーを意識するなら今後避けられないニーズだと思う。内燃機関で難しいならEVファイターで準中型トラックという可能性はないだろうか。EVのトルク特性は地場配送のようなニーズにはぴったりだ。キャンターよりも積めるEVトラックがあってもいいと思う。2018年9月の投稿一覧
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プロフィール
中尾 真二
IT系技術書の企画・編集を経て2003年にフリーランスとして独立。
自動車関係では、パワートレーン、サスペンション、タイヤ、用品・部品関連技術の記事を中心に、主にウェブ媒体向けの取材・執筆活動を行っている。
専門は、ADAS、自動運転、AI、クラウドサービス、セキュリティなど、IT関連のバックグラウンドを生かした記事。 -
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