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    【運送業の「再委託禁止」検討】を検討する

    2024年4月17日 2024年問題

     
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    2024年4月10日、衆院国土交通委員会は物流総合効率化法と貨物自動車運送事業法の改正案を賛成多数で採決。 所謂、物流2法の改正案が採択されました。   その審議の際、運送の「再委託禁止」を検討してはどうか、というお話があったとのこと。     どうやら、【米国がトラック運送事業者による再委託を法規定で禁止し、多重下請け構造自体を禁じたことで、ドライバーの高賃金を実現した】から言われたのでしょう。     一言で申し上げて、雇用形態・法律・文化が違う国がやって成功してるみたいだから日本でもやってみたらどうだ?というのはあまりに安直なお考えです。   そしてこのような現状においてもアメリカではドライバー不足です。         ※この記事は2023年10月のアメリカのCBSニュースの記事です。記事によれば 「Western Pacific Truck School( 西太平洋トラックスクール)のヘイリー氏は『2023年時点でトラックドライバーは8万人の不足、2030年までに16万人不足するかもしれないと予想される。』と述べた。」とあります。     アメリカではWestern Pacific Trucking Schoolと呼ばれるトラックドライバ―育成学校あり、ドライバーの育成にも力を入れている実態がある国でドライバーさんの雇用形態も会社勤めとは別に「独立請負契約」を取れる雇用形態が敷かれており、日本とは環境が大きく違います。     こういった背景を知ってか知らずか、アメリカで成功しているから日本でも!という言動にどうしてなるのかびっくりを通り越して呆れています。     というか、アメリカで下請け構造を解消したからドライバーの賃金が上がった、という論文や記事がないのでどういった根拠を持っての発言だったのかはわかりません。根拠はここに載ってるよ!という記事があれば教えて下さい。     まぁ、私は日本の運送業の慣習しか知らない、ただの配車マンです。     ですが、ここ数日「企業間下請け関係」に関する研究論文を読み漁り、日本における【下請け構造】や下請け収奪に関わる問題について学ぶことで件(くだん)の政治家さんが何も考えていない、ということが自分の中で明らかになりました。     無責任な言動や再委託禁止の何に反発心を覚えるのか、この2つを検討してみようと思います。    

    「下請け」とは何か

        まず、下請けって何?っていう話。     下請け、というのは引き受けた仕事をさらに別のものが引き受けて行うことを指す言葉を言います。   委託をすることで協力会社は仕事獲得の機会が増え、元請けや荷主は委託先が増えてますます仕事を生み出すことができる。   という、Win-Winの関係を築けることのできる構造が本来のあるべき姿なのですが、下請け構造における「収奪問題」が戦後ずーーーーっと問題となっています。   運送業においては「多重」になった「下請け構造」、これ自体が悪い!とされています。   私もこれ自体が悪いと思っていましたが、問題なのは 「中小企業の生産した価値が取引上の優越的地位により寡占大企業に吸収されること」=「収奪問題」 であり、構造によって勝手に作用してしまう収奪問題を緩和しよう、という方が実はシンプルな解決になるのではないかと思っています。    

    収奪問題を緩和するための方法

          下請け、という概念は昔から「経済学」と「法学」の2つのアプローチから研究されてきました。   ですが、両方の学問において今でも   収奪問題を改善・解消するための基礎的な概念定義や政策的検討、実践的展開(「企業間下請け関係における収奪問題の研究 」2023年高平伸暁著)がまだわからない状態です。   悲しいかな、実は下請けの収奪問題を解決するような手段や方法は日本において「ない」というのが現状です。   ないんかーい!!ってめちゃくちゃツッコミたいところですが、それくらい下請け構造による「収奪問題」は根深く、一朝一夕で解決できることではないということなんです。   それをアメリカと同じようにすれば解消する、という全く根拠のない理論を嬉々として発言することが理解できないと思ってしまうのがこのモヤモヤの1つです。    

    運送業的な収奪問題緩和措置を作ることができるのか?

      さっきもお伝えしましたが下請け構造は「経済学」と「法学」なアプローチから研究されています。   そして、実はその両方に収奪問題を緩和させようとする措置が考えられています。   では「経済学」的アプローチの緩和措置からご紹介。   「経済学」的アプローチの緩和措置は「競争制限的不利是正策」と呼ばれます。・・・①   この時点でもはや中国語かしら、と思わずにはいられません。なので分かりやすくまとめてみました。       ざっくり言うと 大企業による不当な圧力から業界を守りましょう→中小企業間の過当競争を緩和します→中小企業同士のカルテルを容認します   という大手からの不当な扱いを公正化しようとする施策です。 中小企業を守るため、の施策と言っても過言ではないものになります。  
        では、「法学」的アプローチの緩和措置も見ていきましょう。     「法学」的アプローチの緩和措置は「競争政策的不利是正策」と呼ばれます。・・・②         もはやこれも中国語みたいに見えますが、経済学的アプローチとの違いは   「制限的」と「政策的」だけです。   こちらの緩和措置をざっくり説明すると   取引のルールを決めます→公正な競争環境を整備します→整備された環境下であれば競争してもらっていいですよ   という、競争を促進させるための手続き(ルール)を作ろうとする施策です。    
        ①は中小企業を丸っと大手から守ろうとする施策にはなりますが、戦後から徐々に廃止されていき、2020年には衰退する地方経済を保護する目的のための「乗合バス及び地域銀行に関する独占禁止法の特例法案」が制定(「企業間下請け関係における収奪問題の研究 」2023年高平伸暁著)されていますが、例外的なものになりつつあります。     ②は現代において最もポピュラーな施策です。。   公正な競争促進が目的である施策のため、2024年の今、中小企業が徒党を組んでカルテルを作ろうとしようものなら「独禁法」違反である、とされてしまいます。   つまり、運送業で中小企業同士が大手の下請け運賃の下限を作ろうとカルテルを組んで談合しようとしても「君たち、それは独禁法違反だよ」と言われてします。   気を付けましょうね(白目)  
      運送業にとって①と②どちらがより業界にとって適正な施策となるかを話し合い、   業界にとってよりメリットがあって、下請け構造での収奪問題を緩和できるのか、ということを認識するところからが下請け構造是正対策のスタート地点になると私は思います。     一度、既成概念などぶっ壊して過去に葬られた①のアプローチから検討してもいいし現状の商取引概念を生かすためにも②を使ったアプローチを作ってもいいからまずここから検討をしなければいけないと思うのです。   そもそも、ドライバーさんを守ること=ドライバーさんを抱える会社を守ることになるのが日本の運送業なので業界を構成する9割の中小零細企業の保護を目的とする収奪緩和措置を取らなければ意味がありません。     そして、あくまでも「公正な」緩和措置でないといけない、という条件も付きます。    

    発注担当者の思惑が運賃を下げる

      そして、忘れてはいけないのが「下請け」関係では発注する側の担当者がいる、つまり相手がいるということ。   初めて発注担当者の心理状態を研究した論文では発注担当者による収奪促進の思考回路には2パターンがあるとされています。 その種類と対策をまとめてみます。   1)悪意の回路:下請けへの配慮性の欠如(下請けは使ってナンボ、業者の経費?そんなん知らん系) 【このタイプの発注者への対策】道徳性や下請けの社会的・経済的重要性を周知する啓蒙的な教育   (2)善意の回路:「会社のため」のコストカット促進(業者さんは大事やけど自社のコストカット指示も大事系) 【このタイプの発注者への対策】構造的なルール上の制約を強くする(運賃の下限設定をする・下請け同士の競争を制限するなど)     経験的に私は両方の担当者と仕事をしたことがありますからきっと皆さんも感覚的にわかるかな、と思います。     (1)、(2)双方の担当者の思惑には感情が入っているので心情的な啓蒙活動を行うよりは、下請けの構造やルールから変える必要があります。     なのでやはり「運賃の下限設定」や「利用運送の手数料設定」などの構造から変えていくのが運送会社への運賃支払いへダイレクトに響くので私はベストなんじゃないかなと思っています。    

    運送業にとってより良い収奪緩和措置とは

      運送業は横のつながりが強く、自社でできないことでもお客様のニーズにこたえるために仲のいい協力会社に依頼をして何とか運送してこようとした歴史があります。     この歴史は我々にとっては誇りであり、何事にも代えられない人間関係という財産であると言い換えることもできるものです。   相互扶助。     この言葉通りに運送業は今まで物流網を守ってきたといっても過言ではないと思っています。     しかし、規制緩和によって「利用運送」を専業とした水屋が乱立、トラックを持たない水屋から水屋へ荷物が流れていき、最終的に運送会社に荷物情報が流れてくるという構造ができてしまいました。     もちろん、運送業ができなかった営業活動を水屋がしてくれた、などの恩恵はあったはずです。     なぜなら運送会社には社長自らハンドルを握る5台以下の会社から大手まで規模の大小が多々存在しており、「できない部分はアウトソーシング」で賄っているからです。     今後、このアウトソーシングしていた部分を自社でしっかり対応するように、ということになっていくと思いますがそれは営業活動であったり、財務・経理であったり社内的な部分のアウトソーシングに限っての自社化促進にとどめる。     対お客様に対して全て自社化をする、ということは不可能であり、相互扶助で培ってきた業界の大切な部分は構造上のルールを変えて残しておくことが業界、ないしは産業全体にとってマイナスにはならないからです。     構造上のルールにおいて     実運送業者への下限運賃の保証     ここをまず設定として定めなければ、再委託禁止や2次下請けまでと議論できません。     運送業にとってよりメリットのある収奪緩和措置はまず運賃下限設定。     これが私の答えです。    

    まとめ

        ドライバーさんを守ることはその会社を守る事。     その会社にしかできない仕事がきっとある。淘汰や合併、それしかないというよりもまず、守るための設定を仕組みとして考えていくのが先決だと思います。     会社なくしてドライバーさん無し。   以前、Xで取ったアンケートにも約半数のドライバーさんが今の会社で働きたいという思いを持って仕事をしています。         2024年問題で様々なことが議論されていますが、   業界の中にいる人たちの「快適な働く環境整備」はほぼ言及されず、   どうすれば決められた拘束時間の中で今と同じだけの荷物を運ぶことができるのか、という部分にだけ焦点が当てられています。   でもそれと同じくらい(いや、それ以上だな)、ドライバーさんたちの働く環境整備は大切。   働き方改革でしょうに今のままでは運び方改革の議論になっているので、本末転倒、馬耳東風な改革になってしまう前にしっかり「働き方」に照準を合わせた議論をしていきたい所存です。    
     
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